2010年2月4日

外資系本が出ると、即買いする犬郎。

今回は『それでも外資系で働きますか』の共著者である津田倫男の新書を読んだ。

それでも外資系で働きますか―Inside Gaishi (Yosensha Paperbacks)/ミッキー・グリーン

¥1,000
Amazon.co.jp

外資系本では、やはり犬郎のおススメは梅森浩一、つぎに奈良タカシかなぁ。梅森氏は、かれの初期の作品などを読むと、本当につくづく「自分のいる世界に近いなあ」などと思ってしまう。タイトルはいただけないが、『クビ論』は外資系の内情をえぐった嚆矢ですね。犬郎的には、いわゆる「腑に落ちる」って感じですか、、、、梅森氏は、また人事の現場に戻ってしまったが、どうしていくつもりなのだろうか。そういえば、私の友人にも、梅森氏にクビの宣告を受けた人がいましたっけ、、、

「クビ!」論。 (朝日文庫)/梅森 浩一

¥525
Amazon.co.jp

『タカシの外資系物語』もブログからの出版だけど、外資系の日常の側面を、おもしろ可笑しく、ときにアイロニーいっぱいに紹介していると思いますね。彼はコンサル業界なので、まあ金融業界ほどの激しさはないですけど。

外資流!「タカシの外資系物語」/奈良 タカシ

¥1,470
Amazon.co.jp

さて、前置きが長くなってしまったが、この本は、「外資系で気持ちよく仕事をし、可能ならば経済的、社会的成功を得るための手引書」、「外資系企業や、外国企業との付き合いを避けて通れない日本企業に勤める諸氏のための外資系との仕事術の解説書」であると、著者は序文で紹介している。

しかし、この本を読んで、外資系企業に転職しようと思い立つ人は本当にいるだろうか。

マネーマネーで、口が上手で、虚言癖があり、他人の功績を横取りし、上司にゴマすり、部下を生かさず殺さず絞りあげる。これらができなければ、「はい、それまでよ!!」の世界ですと言われて、転職する人がいれば、それはそれですごい人というのは間違いない。

さて本書の内容ですが、

第1章 日本企業は国際化しているのか?
 1.なぜ日本人は国際化を嫌うのか
 2.数字で見る在日外資系企業の実情
第2章 外資系企業で評価される人、されない人
 1.外資系で評価されない「できない人」の特徴
 2.外資系で評価される「できる人」の特徴
第3章 外資系で働くとはどういうことか?
 1.外資系で快適に働くコツ
 2.ヘッドハンターの功罪
第4章 あなたの会社が、明日から外資系になったら!?
 1.外資系になると企業文化がガラリと変わる
 2.外資系でサバイバルするための三つの法則
第5章 外国人の上司とはナニモノか?
 1.彼らは日本に何をしに来たのか―赴任の動機を見分ける
 2・外国人上司のここが嫌い!
 3.外国人上司を喜ばせる必殺テクニック
 4.外国人上司と仲良く付き合う法
第6章 外国人ビジネスマンにも色々ある
 1.異文化を理解するとはどういうことか
 2.アメリカ人とビジネスで親しくなる秘訣
 3.ヨーロッパ人とビジネスで仲良くなる秘訣
 4.アジアを代表する印人と華人との付き合い方
エピローグ 外資系企業から日本企業が学べること


犬郎の「日々是新書」は、書籍紹介と自分ための整理ノートなので、書評めいたことを滅多に書かないのだが、本書は、外資金融(とくに投資銀行)の話を、外資系一般に適用して話している。これはいただけない。すべてを鵜呑みにして、外資系企業に転職すると大やけどするので、賢明な読者諸氏には、ディスカウントして読んでもらいたい

犬郎のノート

「米国の投資銀行などで頻発する朝一番の解雇通知では、自分の席に戻ることも許されず、即刻退去を命じられるといったドラマチックな状況もあるほどだ。」(これはあるな!でもアメリカの話です。スヌーピー。)「これは日本の外資系企業においても珍しくない」(疑問!スヌーピー。)(p4)

外資系の明るい側面(p4)
①若年でも力があると分かれば年功や序列を飛び越えて昇進・昇格できる(ある程度首肯スヌーピー。)
②業績への貢献度が高ければ年収をはるかに超えたレベルのボーナスをもらえる(一部金融のみスヌーピー。)
③日本の現地法人や支社で頭角を現すと海外本社で重要なポストを与えられる(GEの藤森氏ぐらいじゃないでしょうか。ほとんど皆無では!スヌーピー。)
④概して給与や福利厚生のレベルが高く、数年勤めると日本の同業企業の社員に比べて実質的な年収が三倍にも五倍にもなる(一部金融のみスヌーピー。)

外資系企業は、職能で結ばれているゲゼルシャフト(利害関係などに基づいて人為的に形成された社会)とみるのは勘違い。むしろ、ゲマインシャフト(共同体、自然発生的に形成された社会)的な要素があり、人間関係は意外と濃密(ウエット)。(p5)

日本人が国際化を嫌う五つの理由(p23)
①外国語に自信がないので、意思疎通をはかれないのではないかと恐れる。
②日本人以外の発想やものの考え方の違う人と一緒に暮らす、仕事をするのが面倒、あるいは自信がない。
③外国人に自分の内なる聖域に踏み込まれたくない。
④自分の力量や経歴に自信がないので(本当は力があるかもしれないのに)、外国人とビジネスを一緒にやりたくない。
⑤修羅場とも言われる外国人のビジネス環境の中で、狭い世間なので通用している自分の実績の底の浅さを周囲の人間に知られたくない。

外資系で評価されない「できない人」の特徴(p46-52)
①時間軸―成果を上げるのに時間がかかる人
②評価者―直属の上司にゴマを上手にすれない人
※転勤・異動のない外資系では、即アウト。外資系のゴマすりは見え見えでここまでやるかというぐらい多い。
③実績―自分の功績を派手にアピールできない人
※他人の功を横取りし、自分の罪を他人に押し付ける力が試される。上司と部下の「死なばもろとも」の強固な関係。将が有能ならば、兵士も一緒に浮かび上がることが可能。
④プレゼン能力―まじめすぎて謙虚な人
※自分の功績を針小棒大に表現できないと割りをくう。

外資系企業では、ポテンシャルが本当に期待されているのはトップ経営者のみ。…中略…それ以外は、前の会社での業績が次の転職の成否を決める最も大切な要素であると、ほぼ100%言える。…中略…外資系の場合は、後任を探しているポストの地位が高ければ高いほど、選考に時間と経費をかける。

外資系で評価される「できる人」の特徴(p56-62)
①時間軸―査定会議の直前に成果を上げられる人
②評価者―上司の出番を作ってあげられる人
※上司がよほど人格者でないかぎり(外資系では望み薄)、手柄を一人占めするのは危険。
③実績―さりげなく他人の功績に便乗し、自分の失敗を隠せる人
※仕事が成功しそうになると、全く関係がないのに、自分もそれに関わっているのだと割り込んでくる人が多い。成功しそうな案件には絶妙なタイミングで、周囲と当事者に自分の関与を主張する。こうしたマーキングができないとダメ。
④プレゼン能力―嘘でも相手を信じこませる人
※嘘も自ら信じ込んで本当だと言い立てるあつかましさが必要。

(外資系での)成功を決める3つの基準(p64-70)
①転職の可否
②顧客の支持
③勤続年数

成功している外資系ほどマイペース型の従業員が多く、成果を上げている限りは、協調しないことに対するペナルティも日本企業に比べて少ない。マイペースが維持できるのは、業績が伴うことが大前提になるので、業績があげられなくなったら協調型に移行するか、転職するかを選ばなければならなくなる。

ステップアップ転職のための4つの心得(p70-79)
①自分の得意分野を鮮明にする
②実績を1つでも多く作る
※本当に人に誇れる実績を幾つもあげるようになると、周囲にどんどん優秀な人間が集まってくる。結果、さらに仕事が集まってくるようになり、実績が実績を呼ぶという好循環を生む。外資系では、この循環のスピードが極めて速い。ために出世する人はあっという間に偉くなってします。
③顧客と知人を増やす
※外資では「損得」が全ての価値基準であり、「正邪」は不要かる有害な判断基準である。「上司の仕事が見苦しい、正しくない」と言い張るメリットはゼロ。デメリットは数限りなくある。日系企業によくいる「宴会部長」や「人事相談課長」、仕事はできないが人望はある人は外資系では皆無。
④履歴書に嘘は書かない


ヘッドハンターの限界(p81-82)
・全ての業界で全ての「人物」を知っているわけではない。
・仮に相当な数の人物を知っているとしても、一対一で会える関係はそれほど多くない。
・候補者を総合的、客観的に評価できるほど、一人一人について知らない。
・時間の制限もあり、全ての理想的な候補者に接触できない。
・候補者自身の利益よりも、雇い主の利益を最優先する。
・自分がよく知っている候補者、過去に仕事を世話したことのある人物、昔お客さんとして付き合ったことのある人間などに対して、個人的な感情が入り込みやすい。


ヘッドハンターと付き合う際の注意
・ヘッドハンターは友人ではないので、自分自身の情報開示には慎重に、細心の注意を払う。
・ヘッドハンターが自分の探している職種や業界に顧客を持っていない場合、彼らから良いポジションを紹介される可能性はほとんどゼロである。
・仮に良いポジションが提示されて場合でも、ほかに候補者が多数いることは間違いないので、期待をかけすぎない。
・ヘッドハンターにとって自分は商品であることを忘れずに。安売りせず、かつ高望みもせず、自らの勝ちを冷静かつ客観的に評価すること。

外資系に転職を考える人は、「自己の業績と能力のたな卸しを常に行ない、誇るべき仕事上の実績を少しでも多く持ち、レファレンス先として有力な顧客と社外人脈の形成を怠らず、履歴書を常に更新して転職に備えつつ、願ってもないポジションの公募に目を光らせ、ヘッドハンターとも保険のつもりで適度に付き合うべし」。

(自社が)外資系企業になったとたんに起こる九つの変化(p91-112)
①経営陣が外国人に入れ替わる。
②給与や待遇が、年功主義から成果主義の方向に変わる。
③株主や本社幹部の意向が唯一絶対の基準となる。
④「社員は仲間だ」という意識から、「誰もがライバル」に変わり、協働に損得勘定が強く入り込む。
⑤外国語のできる社員が突如、優遇されるようになり、言葉が苦手な社員は傍流になる。
⑥顧客の選別が進み、なあなあの営業や顧客とのもたれ合いが許されなくなる。
※「相手に仕事でメリットを落とす」「それで顧客に満足してもらう」「しかも原則的に一年以内にそれを実行する」の姿勢が徹底して求められる。
⑦「社会との共生」や「多様性の尊重」といった、従来はお題目に過ぎなかったテーマに真面目に取り組むように言われ、それを怠ると罰せられる。
⑧喫煙や飽食が戒められ、健康管理や自己規律の低い社員にはペナルティが与えられるようになる。
⑨無駄な会議は減り、会議時間が短くなるが、事前の準備が必要なものが増え、議題外のことも論議されるようになる。
プラス:上司の権威を笠に専横する社員、上司へのゴマすりだけで生き延びようとする社員、屁理屈に強い社員が生きやすくなる。

外資系でサバイバルするための三つの法則(p114-131)
①めだたず
②おくれず
※日本の普通の企業であれば、「頑張っている」と言える行動レベル。部下を馬車馬のように働かせ、自分は少し楽をすることも要諦。
③にくまれず

外資系ではすべてが「利益と成長」という二つのキーワードに集約される。(p116)

ある外資系金融機関にまつわる噂:ナンバーツーかスリーのポジションには、必ず日本人、しかも著名邦銀や日系証券会社からの転職組をあてる。その狙いは、不祥事の際にクビを差し出す要因にするため、だとか。(p116-117)

日本に赴任してきた五つの外国人上司のパターン(p134-148)
①必要とされて来た(徹底して尽くす)
②左遷されて来た(良い思いでを作ってあげる)
③経験を積むために来た(相手次第、尽くすか理不尽なら辞める)
④本人が望んで来た(狙いを見極め細心の注意が必要)
⑤特別任務で来た(狙いを見極める)

一般に欧米人や、欧米で教育を受けたアジア人の上司は、部下からの率直な批判を嫌う。…中略…これは、外資系企業の文化では、「間違う上司は、正しい部下よりも価値が低い」という考えからくるもので、したがって率直な批判を受け入れる素地はないと考えたほうがよい。(p153)

ポリティカル・アニマル(政治人間)は、専門性の高い職種や高給取りに多い。また国籍でいえば、アメリカ人よりもヨーロッパ人にずっと多い。アメリカ人は彼らに比べると比較的わかりやすいので仕事はしやすいが、人間的には退屈なことが多い。一方、ヨーロッパ人は一筋縄ではゆかないが、親しくなると面白い人間が意外といる。(p158)

外国人上司を喜ばせる必殺テクニック(p160-169)
①上司に花を持たせる
②「尊敬されている」「信頼されている」と伝える
③「日本人に理解がある」と伝える
④「教養がある人」と褒める
⑤「改革を期待している」と伝える

外国人上司と仲良く付き合う法(p170-178)
・和して同ぜず
・外国人は褒め言葉に弱い
・付かず離れず
・サプライズを積極的に活用する
・期待を良い意味で裏切る
※外資では、どんなに忙しくても、上司から自分に対して働きかけがあった場合、それに最優先で応える必要がある。退社時間となりデスクを片付けている時でも上司から呼ばれたら、アフターファイブをキャンセルしてでも対応する覚悟が必要となる。

異文化理解とは(p181-182)
①民族、歴史、国籍と主たる生活の場
②主たる言語と主な関心事
③生活様式と、物事に対する考え方
④教養とほかの文化に対する許容度

外資系企業で成功する人、失敗する人 (PHP新書)/津田 倫男

¥756
Amazon.co.jp