2010年2月7日

金井先生と平尾さんの本は、いまでも即買いの対象となっている。

自慢だが、お二人の本はすべて書店に並んだ日には読み終えているので、執筆者本人と編集者を除けば、犬郎は、日本で100番以内に読了した人といえるのではないか。

まるで、ハリーポッターの新刊本を誰よりも早く手に入れたい、宮沢りえの写真集をだれよりも早く見たいという人たちの気持ちに通ずるものがある。むかし、少年ジャンプを誰よりも早く手に入れて喜んでいたことのアナロジーである。

この二人の共著は初めてではなく、すでに『日本型思考では勝てない』で一度実現しています。神戸在住の最強コンビといってよいでしょう。

金井先生が、平尾さんの現場での実践理論を、組織論・リーダーシップ論などに当てはめて解説していく対話スタイルのもので、通説のコーチングの理論を覆す、平尾さんの「型破りの」コーチングに学べる本である。

すごくよい本です。犬郎は、三回通読し、12冊購入して、日本の職場仲間にプレゼントしました。

平尾さんの講演を聞いたことがある人は、この本の語り口に平尾調を感じることができるでしょう。講演も抜群にうまいひとです。

興味のある人は、2004年の平尾さんの講演「ラグビーに学ぶリーダーシップと強い組織作り」の犬郎ノートをご参照ください。

まえがきに代えて―言葉にする力 金井壽宏
第1章 型を教えてもメンタルは育たない
  ・なぜパスは下から投げるか
  ・「おまえ恥ずかしくないのか」は禁句
  ・叱っていい相手や場面は選びなさい
  ・反発係数が低くなって若者たち
  ・手を抜くための言い訳ばかり
  ・「馴れ合いのチームワーク」なら無責任を生み出すだけ
  ・子供に個室を与えるときのルール
  ・集中力があればいいというものではない
第2章 日本の組織では「自律ある個」は生まれないのか
  ・「ひらめき」が育たない土壌
  ・他者との関係性のなかにある日本の個人「イーチネス」
  ・「チームワーク」より「チームプレー」―仕事(ワーク)と遊び(プレー)
  ・個の成熟が組織の強化につながるためには
  ・人は一人で成功しても満足できない
  ・「やらなければならない」から「やれる」「やりたい」へ
  ・指示待ち部下は上司がつくりだしている
  ・なぜ自分で考えない部下が生まれるのか
第3章 コーチングの通説を疑え
  ・「オレの背中を見てついてこい」は最悪
  ・常識や伝統は疑ったほうがいい
  ・自分でセオリーを構築し、実践し、伝える
  ・「いい話を聞いた」と満足させるだけでは意味がない
  ・チームを導くには三人のリーダーが必要
  ・カリスマ的リーダーはもはや存在しえない
  ・「教えるプロ」に年齢は関係ない
  ・「人生の先輩ヅラ」は一歩職場を出てからにすべし
  ・組織には要らないものがたくさんある
第4章 だれもがついてくるリーダーシップ
  ・リーダーを選ぶときは部下の意見を真に受けない
  ・バランス感覚よりもアンバランスをものともしない力
  ・教える側の立ち位置と距離感
  ・一人で一〇〇人を束ねるのはもはやムリ
  ・「スーパー・リーダー」の条件
  ・個別配慮でやる気を回復
  ・「わがまま」ではなく、みんなが納得する「特別扱い」
  ・リーダーシップはリーダーとフォロワーのあいだに漂っている
第5章 コミュニケーションの新発想
  ・発信機ではなく受信機の精度をあげる工夫
  ・相手の受信機を高めるのは教える側の受信機しだい
  ・弱点を直す声がけの方法
  ・ダメ出しから入るな
  ・アドバイスに必要な三つのポイント
  ・言葉のセンスを磨く
  ・相手の予想を裏切るコーチング手法
  ・思い込みやうぬぼれを気づかせるには
  ・二番セカンドを自分で選んだという感覚が大切
第6章 やる気は裏切りから生まれる
  ・ほんとうに「アメとムチ」は正しいのか
  ・だれかに喜んでもらいたいという実感
  ・ニンジンの危険性
  ・意味なくやらせても根性は育たない
  ・指導に必要な論理的思考力と洞察力
  ・目標は驚きや感動があってはじめて共有できる
  ・「バカな」と「なるほど」
  ・現代ビジネスマンは「複雑人モデル」
第7章 最強のチームをつくる
  ・世界標準を知る機会
  ・優秀な人材を見抜く基準
  ・情報を集め判断する力
  ・二重ループ学習の効用
  ・人を最大限に活かすための編集力
  ・チームへの誇りは自分へのプライドから生まれる
  ・責任転嫁がなくなるチームづくり
あとがきに代えて―強いチームには「湿り気」がある 平尾誠二



犬郎ノート(すんません!。スヌーピー
自分のためのノートなので整理されてません)

はたして世界レベルを目前にしたときに、競争するにしろ共同するにしろ、どのようにふるまえばよいのか。それが本書の隠れたテーマ。(金井)(p3)

自分ができることをほかの人にも伝えたいという思い(p4)

いままでできなかったことができるようになったときに、わがことのように喜ぶのが、もっともポジティブだとの持論…中略…「それは人格者であるかないかの問題ではなくて、ぼくが自分で選び、没頭しているのがチームスポーツであるラグビーだったからです。自分がうまくできることが、ほかのメンバーにもできるようになったとき、チームが強くなるのです。」(p4-5)

自分のアンテナに引っかかることについては恐ろしく研ぎ澄まされた感性と経験から蒸留された自分なりの考えをもっています。それが確固たるものとなり。実践を導くに足るものとなっているときに、私はそれを「実践的持論」と呼んでいます。(p5-6)

「名選手必ずしも名将にあらず」が少しでもあてはまるのだとしたら、それはチームの大きな絵を描くにしても、プレーの細部についても、そのエッセンスを言葉にして伝えるのがあまり得意ではない人を指すのでしょう。(p6)

「個の弱さを組織力で補うという発想では世界では勝てない。強い組織には強い個が必要である。」
「精度の高い技術だけでなく、状況判断ができる自立した個人を育てるべき。」(p7)

平尾さんの持論はよく見ると、会うたびに姿かたちが微妙に変化しています。中心を貫く柱は決して揺るがないものの、それ以外の部分に手を加えたり、別のものと入れ替えたりすることを平尾さんは躊躇しないのである。それがすばらしいところです。(p11)

スポーツ界にかぎらず、日本のあらゆる組織がいま必要としているのは「破」ではなかろうか。…中略…この本で一人でも多くの人が「型」を破ることの重要性に気づき、さらに次の段階である「離」に向かった歩きはじめてくれたなら、こんなにうれしいことはありません。(p13)

型は教えるけれど型の意味は教えないという特徴が、伝統を継承していくのが自分の仕事なのだと思い込んでいる、古い日本の指導者にはある。(p23)

パスの本質は、AからBにボールが渡ることによって、現在より有利な状況をつくる行為…中略…本質きちんと選手が理解していれば、苦し紛れに球を出すような最悪のパスは、確実に減る。正しいほうり方を教えるなんていうのは、順番からいったらもっとずっとあとでいい。(p24)

安藤忠雄の「あ、それ知らんわ」(p26)

元ジャパンキャプテンのアンドリュー・マコーミック:日本の選手に足りないものは何かと聞いたら、「メンタルタフネス」と返ってきた。(p35)

ボールを奪った相手からどんなに遠くにいても、走り出すのはマコーミックがいちばん速い。彼は決して脚は速くない。ただ、反応が極端に速い。そのとき日本人選手はどうしているかというと、これがみごとに反応していない。だれかがタックルに行くだろうと思って見ている。(これは)プレーに対して当事者意識が薄いからそうなってしまう。これをマコーミックはメンタルタフネスが足りないといったのでしょう。(p38-39)

1964年のキティ・ジェノベーゼ(冷淡な傍観者)の「傍観者効果」の事例。(p39-40)

街中で心臓発作を起こした場合、目撃者が一人のときは81%の人が救助に駆けつけたのに、その場に複数の人がいると救助してもらえる確率は31%以下に下がった。(p40)

よいグループ経験と悪いグループ経験(p40)

日本のプレイヤーは集中力だけならかなりあるほう。ただ、日本人の場合、集中と分散の使い分けがうまくできる選手が少ない。ここはリラックスしたほうがいいという場面でもずっと集中していたり。(p45)

「ロナウジーニョの想像を超えるパスにディフェンダーはついていけません」ってまさに日本的発想。こういう場合はこうパスするという決め事が頭にあるから、そこから外れたものはみんな「想像を超える」ということになってしまう。(p52)

集団のなかで個人をどのように定義するか。西洋で個人を意味する単語は「インディヴィデュアル」(individual)、つまりこれ以上分割(divide)できない単位が個人。日本の個人は人と人との関係性のなかにある。河合隼雄は、これを「イーチネス」(eachness)という造語で表現。(p53-54)

この国がもともと大事にしてきた人の関係性を断ち切って競争を煽るような、非常に粗削りな成果主義を導入する企業がここ数年、目だってきています。しかしながらその結果はといえば、個人の力は多少高まったものの、組織としての力は逆に劣化してしまったケースのほうが多いのでないか。(p55)

日本の組織がどうも窮屈に感じられるのは、規律の割合が大きすぎるからではないか。…中略…ですから、組織と個人の関係を考えるにあたっては、まず、遊び=プレーの概念を全員が共有し、そのうえで自由と規律のバランスを考えるのが、ぼくなりのやり方。(p56)

マイケル・ジョーダンがバスケットボールをしたらワークで、ギターを弾いたらプレー。エリック・クラプトンがギターを弾いたら仕事で、バスケットボールをしたら遊び。(p57)


上に立つ人の持論は、その人が意識するしないにかかわらず確実に組織に影響を与えるので、指導者や管理者は、自分は仕事やリーダーシップ、部下のモティベーションなどに関してどのような考えをもっているのかを、つねにチェックしなければならない。(p69)

まじめで品行方正、大胆さや狡猾さ、新しいアイデアを提案する役割、このリーダーに求められる三つの役割を一人で引き受けるのは、客観的に見れば大きな矛盾というところから、機能別に「チーム・リーダー」、「ゲーム・リーダー」、「イメージ・リーダー」に分けた。(p85-90)

「チーム・リーダー」に不可欠なのが決断力と判断力、これを「見切り」と「仕切り」

「ゲーム・リーダー」には自負心や豪胆さ、応用力、柔軟性、構想力がないといけない、これを「仕組み」と「仕掛け」

「イメージ・リーダー」は、あまりリーダーっぽくはないけれど、おもしろいことばかり言っているようなヤツが向いている。アイディアを出すのが役割、これを「危うさ」と「儚さ」とした。※このアイディアマンのはみな短命だ。

高橋潔(神戸大教授)の「リーダーシップ脳の4次元」モデル(p89-90)

未来志向/現在志向 × 業務系(理性)/対人系(感情)

未来志向 × 対人系(感情)=育成型リーダーシップ(ドリル・リーダー)
未来志向 × 業務系(理性)=ビジョン型リーダーシップ(イメージ・リーダー)
現在志向 × 対人系(感情)=チームワーク型リーダーシップ(チーム・リーダー)
現在志向 × 業務系(理性)=業務遂行型リーダーシップ(ゲーム・リーダー)

本来、年齢はリーダーとしての適性や資質にはあまり関係ない。1990年代イングランドの主将に務めたウィル・カーリング(22歳で代表に選出されたはじめてのテストマッチでキャプテン)。(p93-94)

サッカー中田英寿のパスには「受け手への愛がない」に対して、相手が苦労しても正しい方向にパスをだすのが大切(平尾)。(p97)

先輩に「さん」付けしない中田。欧州プレーの経験?「さん」をつけないほうが短く呼べて合理的。スヌーピー

日本も西洋のようにファーストネームで呼び合うことにしたら、へんな意味での年功的な考え方はなくなるだろうか。「○○部長(役職呼称)」読みから「○○さん(苗字さん付け呼称)」を経て、「イヌロー(ファーストネーム呼称)」。(スヌーピー

選手[社員]が成熟していないうちは、自由や権利を際限なく欲しがりますから…中略…監督[上司]は選手[社員]の意見を聞くにしても、あまりそれを真に受けないほうがいい。(p105)カッコ内はスヌーピーが補足。

名監督といわれているような人たちは、類まれなバランス感覚の持ち主というよりも、アンバランスをものともしない人のほうが多い。(p106)

(監督の仕事で)いちばん難しいのは立ち位置…中略…いったん立ち位置を決めるコツを覚えてしまえば、今度はどのチームの監督になっても通用する。…中略…一般的に、理論家は遠く情熱家ほど近づきたる傾向にある。(p108-109)

リーダーシップはリーダーのなかにあるのではなく、リーダーとフォロワーのあいだに漂っている。(p123)

コーチングとは教える側の発信機ではなく、いかに教わる側の受信機の精度を高めるかがポイント。(p126)

コーチのアドバイスの3つのポイント(p137)
①教えることを一つか二つにしぼり、できるだけ簡略化して伝える。
②頑張ったらできることしか言わない。
③それができたら状況が激変したことを、必ず本人が実感できる。

モチベーション理論の四体系(p152)

①欲求の中身について書かれているもの。達成動機や親和動機、欠乏欲求、自己実現欲求など。その内容としては、不快や緊張を緩和したいという欲求、つまり回避欲求と、快や楽しみに近づき実現したいという接近欲求がある。(金井)は前者を緊張系、後者を希望系と呼んでいる。
②その欲求が具体的なやる気につながっていくプロセスやメカニズムに言及したもの。外発的な動機づけと内発的な動機づけの違いを扱ったものや、報酬と欲求充足行動の関係などはここに入る。
③学者がつくった理論ではなく、自分自身がどういうときに落ち込んだり、頑張る気になったりするかを説明する。優れた実践家のセルフ・セオリーに注目する理論=「持論の理論」。
④ラグビーのようなグループ競技や活気のある職場で起こることで、みんなが緊張感と希望をもって本気で頑張っているので自分もそうなってきたという関係性に注目するもの。

チームのビジョンを選手全員が共有するのは、絶対に必要なこと。そのためには、ビジョンそのものに、やりがいやおもしろさを感じさせる力がなければならない。逆にいえば、選手がビジョンに興味をもてば、勝手に共有するようになるはず。では、どんなものなら選手たちはおもしろいと感じるかといえば、それは、彼らの思考やイメージの枠を超えたもの。(p166-167)

(希望の心理学に言及して)希望の構成要素の一つは「ゴールパワー」といって、目標そのものに力があること、でもこれだけではまだ足りなくて、その目標にいたる確かな道筋、「パスパワー」も同時に示せなければ真の希望とはならない。(p167)

高いモティベーションを維持するための3つのポイント(p172)
①既存の選手のモラル
②見返り
③ついていきたい、一緒に目標にむかって努力したい人の存在

モティベーションの源泉の変遷(p173)
賃金 → 職場の人間関係 → 自己実現モデル → 経済人モデル → 複雑人モデル

自分自身が世界標準を身につけ、さらに次の世代にそれを継承していくことを、一人ひとりが真剣に考える時期が来ているのではないか(金井)(p176)

ラグビーでも、ゲーム中のからだの向きを見れば、その選手が優秀かそうでないかは、すぐにわかる。端的にいえば、その選手の情報収集能力がわかる。(p178)

アイツがミスしたから負けたとか、アイツがあんなパスしなければ勝てたとか、責任のベクトルが他人に向いたとたんに、その人の成長は止まる。そうではなくて、なぜアイツのミスを俺がカバーできなかったんだ、あるいは、内側でなく外側に走るよう練習中に指示をしておくべきだったと、つねに自分のできることを全員が考えているチームくらい怖いチームなない。(平尾)(p190)

好きでたまらないか、やりがいを感じているか、少なくともやっている意味がわかっている人間でないと一流にはなれない(岡仁詩 元同志社監督)(p198)

ミスをしたときは反省などせず、「さあミスを取り返すぞ」と、いままで以上に積極的かつ大胆にプレーしなければならないのだ。(平尾)(p200)

引用

ドナルド・ショーン(Donald A. Schoen)(MIT教授)(p9)
現実の世界でうまく物事を実践しながら、その経験から得た教訓を言語化できる人のことを「内省的実践化」(reflective practitioner)と名づけた。

マーカス・バッキンガムとドナルド・O・クリフトン(p32)
「あらゆることが完璧にできるようになることにこだわる必要はない。ダメージコントロールにこだわるようり、強みを見つけ、そこを最大限に伸ばすほうが、個人でも組織でもよっぽど生産的だ。」

マーティン・セリグマン(p33)
「なんで心理学者はうつとか神経症とか不安のようなネガティブなことばかり研究して、人間のポジティブな部分を研究テーマにしないのか」

河合隼雄
日本人は個室のルールがわかっていない。欧米では子供に個室を与えても、生活はできるだけリビングルームですることを徹底させる。個室を与えても部屋のドアは完全に閉めないというルールもある。つまり個室といってもそこは、逃げ込むための場所ではない。(p42-43)

教育には、「教える」と「育てる」の両面があるのに、日本には「教師」はいても「育師」がいない。(p162)

マイケル・シュレーグ(『シリアス・プレー』(Serious Play))(p57)
真のベンチャー企業、つまり冒険している企業は、真剣に働いているのではなく真剣にプレーしているのだと結論づけている。

ディビッド・ベイカン(『人間存在の二重性』(The Duality of Human Exsistence: Isolation and Communion in Western Man))(p60)
人間が何物かを達成したいとの気持ちをもつのは、神のエージェントという意識がどこかにあるからだというのがエージェンティック(agentic)の意味。しかし、たんに神の代理人としてがんばり続けるだけなら、やがてその人は、あたかも自分が神のようにふるまうがん細胞に堕してしまう。そこで、コミューナルという共同性が必要性が必要になってくる。

加護野忠男(『日本型経営の復権』)(p60)
日本企業の長期指向、現場の知恵重視、オペレーションのきめ細やかさ、取引先や従業員のコミットメントなどに関するこれまでの研究を踏まえて、経営者たちとともに、一見すると非合理に見えるものまで、含めて、日本型の経営のあり方や人との関係、思考法におけるよさをしっかりと認識すべき、と主張。

「日本の会社もこれからは個の尊重が大事になってきますね」(金井)に応えて。「そんなややこしいこと言わんでも、組織が成り立っていたときのほうがよかったのと違うか。」
「会社に入る前に、どんなかいしゃで何をやるかも知らずに現実主義的に試験を受ける学生がいるのは嘆かわしい」(金井)に応えて、「そんなものわからなくても、長くいるうちに好きになるのが会社だ。」(p81)

エイブラハム・H・マズロー(p63)
ほんとに自己実現を達成したといえるのはシュバイツァーやトーマス・ジェファーソンといったごく一部の人間だけで、ふつうの人はなかなかそこまで到達できない。

ディビッド・マクレランド(p63)
人間の三大動機に、達成動機と他人を支配したいというパワー動機、そしてもう一つ、他人と仲良くしたいという親和動機をあげている。

ダグラス・マクレガー(MIT教授)(p66-68)
仕事なんておもしろくないものという理論をX理論、やりようによっては仕事も趣味のように楽しめるとの理論をY理論呼ぶ。イヤでも「やらなければならないこと」をアメとムチを使ってでもやらせるのがX理論で、仕事であっても「やりたいこと」なら進んでやるはずなので、仕事そのものを楽しんでまらったらいいと考えるのがY理論。みんながY理論をめざすべきだなどということをマクレガーは言っているのではなく、ポイントは、マネジャーの持論がそのまま反映されて職場ができあがるというところ。

チャールズ・マンツ(p113)
「セルフ・リーダーシップ」を提唱。メンバー一人ひとりが自分自身をいいかたちでリードできるよう、さりげなく誘導するのがセルフ・リーダーシップ。「気がついたらあの人のおかげだった」とメンバーから思われるような人こそが、究極のリーダー。

ただし、この教えは、リーダーは何もせずに放任がいいと言っているのではなく、リーダーが「為さない」とこを一生懸命「為す」ことで、メンバーがみずから目標を立て、やる気をだし、さらには自分で自分に報酬をあたえるようになるということなので、かなり高度なリーダーシップといえる。(金井)

デニス・ルソー(カーネギーメロン大教授)(p119-122)
キャリアにおいて個人は「idiosyncratic(特異=わがままな) deal(取引)」を要求し、雇用する側もそれを認めたほうが「ideal(理想的)状況になる」という"i-deal"という概念を打ち立てた。

エドワード・L・デシ(p159)
「外発的な報酬も自己制御(selfregulation)できるようになったら、それはもはや外発的動機づけではない」、一方で、せっかくおもしらいからという内発的動機でモティベーションが高くなっているところに、新たに報酬を加えると、今度は報酬に支配されるようになることもあるので、これには気をつけなければならない。

吉原英樹(南山大教授)(p170)『バカなとなるほど-経営成功のキメ手』(同文舘出版)
「バカな」と言われるような部分がなければ、他人がとっくにやっているはずだ、でも「なるほど」がないとだれもついてこない。だから優れたビジネスプランには「バカな」と「なるほど」の両方が必要。

クリス・アージリス(ハーバード大)
「行為中に実際に使用している理論」(theory-in-action; theory-in-practice; theory-in-use)または「内省しないと気づかれない理論」(theory-in-reflection)

いまやっている方法が正しいんだと、同じやり方を延々とくりかえすだけではダメで、そうしながら同時に、このやり方でいいのかと検証し学習しなおす「二重ループ学習」という概念を提唱。

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